「オリパってヤクザがやってるんやろ?」
掲示板でもXでも、定期的に流れてくる。実際「オリパ ヤクザ」「オンラインオリパ ヤクザ」「オリパ 反社」で検索している人がいる。射幸性が高くて、現金化できて、たまに業者が飛ぶ。そういう商売を反社会的勢力が握っているんじゃないかという疑いは、感覚としては分かる。
ただ、感覚で終わらせると判断を間違える。編集部は法律の条文と、実際にオリパを運営している会社の公開情報を突き合わせた。
結論から言うと、オリパは警察(公安委員会)の許可がないと1日も営業できない商売である。そして今回調べた範囲では、主要事業者が反社会的勢力と関係するという公的な指摘や報道は確認できなかった。
ただし——「反社じゃないから安全」ではまったくない。危険はもっと別のところにある。
ポイントまとめ
- オリパは中古カードを売買するので古物商許可が必須。許可を出すのは都道府県公安委員会=警察である(古物営業法3条)
- 同法4条は、暴力的不法行為を行うおそれがある者や暴力団対策法に基づく命令・指示を受けて3年経っていない者に許可を出してはならないと定めている。法人の場合、役員にそういう人物がいるだけで許可が下りない(4条11号)
- 無許可営業は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(31条1号)。飾りの許可ではない
- クレジットカード決済が通っている時点で、割賦販売法35条の17の8の加盟店調査という2枚目の審査を通っている
- 実際の運営者は、東証スタンダード上場企業や、決算公告で純利益23億円超を出している株式会社である。上場企業の新規参入も今年あった
- 編集部が調べた範囲では、オリパ事業者が反社会的勢力と関係するとして摘発・公表された事例は確認できていない
- 危ないのは反社かどうかではなく、①古物商許可番号を出していない ②特商法表記がない ③屋号だけ変えて実体が追えない、この3つ
まずここが出発点である。意外と知られていない。
オリパの中身は中古のトレーディングカードだ。中古品を仕入れて売る商売は古物営業にあたり、古物営業法3条がこう定めている。
前条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
公安委員会は警察の管理機関である。つまりオリパ業者は、開業前に警察の審査を通っている。届出でも登録でもなく、許可だ。
そして無許可でやった場合。31条1号。
第三条の規定に違反して許可を受けないで(中略)営業を営んだ者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
さらに24条1項で、営業開始後も「六月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずる」ことができ、許可の取消しもできる。入口も出口も警察が握っている。
主要各社が特商法ページに古物商許可番号を載せているのは、この許可があるからだ。編集部が読んだ範囲では、クローブは北海道公安委員会 第123010000972号といった具合に、公安委員会名と12桁の番号が明記されている。
ここが本題である。古物営業法4条は「許可の基準」を定めた条文で、該当したら公安委員会は「許可をしてはならない」。裁量ではなく禁止だ。
関係するのは3つの号である。ネット上には「暴力団は古物商許可が取れない」と雑に書かれていることが多いが、条文はもう少し細かい。
4条3号
集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
「暴力団員である」と書いていない点に注意したい。組織に属しているかどうかではなく、そういう行為を行うおそれがあるかで判断する建て付けになっている。実質的に暴力団関係者を捕捉する条文だが、名指しではない。
4条4号
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第十二条若しくは第十二条の六の規定による命令又は同法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの
こちらは暴対法を直接引いている。中止命令や再発防止命令を受けた人物は、3年間は古物商になれない。
4条11号(法人への波及)
法人で、その役員のうちに第一号から第八号までのいずれかに該当する者があるもの
これが効く。会社を作って人を立てても、役員に該当者が1人いれば法人として許可が下りない。そして役員は登記事項なので、公安委員会は登記を見れば分かる。
さらに2号では、窃盗(刑法235条)・横領(252条系)・盗品等に関する罪(256条2項)で罰金以上の刑を受けて5年経っていない者も欠格とされている。古物営業法は元々「盗品の流通を防ぐ」ための法律なので、この手の前科に厳しい。
つまりオリパを法人でやるには、役員全員がこの審査を通る必要がある。構造として、反社会的勢力が正面から入るのは相当に難しい。
オリパの主要各社はクレジットカード決済に対応している。これも実は審査を通った証拠である。
割賦販売法35条の17の8は、カード決済を取り扱う契約を結ぶ事業者(アクワイアラや決済代行会社)に対して、こう義務づけている。
クレジットカード番号等取扱契約締結事業者は、クレジットカード番号等取扱契約を締結しようとする場合には、その契約の締結に先立つて(中略)調査しなければならない。
しかも3項で、契約後も「定期的に、又は必要に応じて」調査する義務がある。4項では、問題があると認めれば契約の解除などの措置を取らなければならないとされている。
正確を期すと、この条文が法律として求めているのはカード番号の適切な管理と不正利用の防止であって、「反社チェックをせよ」と法文に書いてあるわけではない。反社の排除は、カードブランドの規約や加盟店契約の暴力団排除条項という実務レイヤーの話だ。
ただ実態として、加盟店審査を毎回通り続けながら、大手ブランドのカードを何年も使わせ続けるのは容易ではない。オリパは決済業界から見て高リスク業種に分類されやすい。カードが普通に使えている事業者は、その審査を繰り返し通過していると考えていい。
条文の話だけでは足りないので、実際の運営者を公開情報で見る。
- 業界最大手クラスの日本トレカセンターは、決算公告で純利益23億円超を計上している。決算公告は会社法上の義務で、官報などに載る公開情報である
- 相場メディア「ポケカチ」とオリパ攻略メディア「オリパアカデミー」を運営するのは、東証スタンダード上場の株式会社コレックホールディングス(証券コード6578)
- 今年7月には、東証上場のMUSCAT GROUPが子会社を通じてオリパ事業に新規参入している
- DMMも「Dオリパ」で参入し、5ヶ月で撤退した
上場企業が有価証券報告書に書ける形で参入し、決算公告が出て、撤退もニュースになる。反社会的勢力が仕切っている市場の姿ではない。
そしてもう1つ。今年に入って自民党のトレカ議連と日本トレーディングカード協会が相次いで動き出している。規制される前提で業界団体ができるというのは、地下に潜っている産業では起きないことである。
ここまでの話と、世間の印象は明らかにズレている。理由を分解する。
- 射幸性が高い。金を払って何が出るか分からない構造は、賭博のイメージに直結する。そして「賭博=暴力団の資金源」という連想が働く
- 換金性がある。当選カードをポイントに変えられる仕組みは、パチンコの換金の話を連想させる
- 「還元率110%」のような、算数が合わない訴求。弁護士が賭博罪の可能性を指摘した件のように、実際に法的な疑義が出ている
- オンラインカジノとの混同。オンカジは日本国内から利用すれば違法だが、オリパは違法とされていない。この2つが同じ棚に置かれている
- 個人オリパの存在。Xのアカウントが個人で回している小規模オリパは、法人格も許可番号も確認できないものがある。この層の印象が業界全体に被さっている
- 業者が飛んだときの語感。700万円分が未発送のような事案が起きると「飛んだ」と表現される。これも裏社会の語彙である
要するに、印象の出どころは「構造の似ている別のもの」との連想であって、運営実態の話ではない。
正直に書く。
編集部は、オリパ事業者が反社会的勢力と関係するとして摘発された事例、あるいは行政が公表した事例を探したが、確認できなかった。
あわせて、前回のまとめ記事でも書いたとおり、オリパを対象とした景品表示法の措置命令も、消費者庁の公表資料上では確認できていない。
「無い」と断定はしない。編集部の調査範囲で確認できなかった、という事実を書くにとどめる。ただし少なくとも、「ヤクザがやっている」と言い切る根拠になる公的な材料は、現時点で存在しない。
逆に言うと、ネット上でこの手の話を断言している記事は、その根拠を一次情報で示せていないということでもある。
ここがこの記事でいちばん言いたいところである。
「反社じゃない」は「安全」を意味しない。今年起きた事故を並べると、加害の実行者はどれも普通の事業者である。
- 700万円分の当選品が1ヶ月以上届かない
- 43万円引いて1,000円超えのカードが1枚も出ない
- 46,500円分のくじを引いたら、店側が「購入時点で当たりが残っていなかった」と認めた
- 9万円の福袋の中身が、相場合計86,000円
- 高額当選したら家族全員の本人確認書類を要求され、出したら利用制限
どれも反社の話ではない。そして反社かどうかを気にしていても、これらは1件も防げない。
実際に警戒すべきなのは、次の3つである。
①古物商許可番号を出していない
中古カードを扱う以上、許可は必須である。番号を書いていない、あるいは公安委員会名がない事業者は、そもそも法律の入口を通っていない可能性がある。
②特定商取引法に基づく表記がない
事業者名・住所・電話番号・責任者名の記載義務がある。ここが空欄なら、トラブルが起きたときに誰に何を言えばいいのか分からない。
③屋号だけ変えて、実体が追えない
これがいちばん厄介だ。サイト名やブランド名は簡単に変えられる。過去に別の名前で問題を起こした運営が、名前を変えて再登場するパターンがある。
そしてもう1つ、オリパ業者ですらないケースがある。Xでオリパ業者を装い、誘導先が無料の簡易サイトで、そこに就職・転職系のアフィリエイトが貼ってある——という型が実在する。プレゼント企画で個人情報や電話番号を集めるのが目的で、オリパは看板でしかない。反社を警戒するより、こちらのほうがはるかに遭遇率が高い。
疑うなら、感覚ではなく手順でやったほうが早い。全部無料でできる。
- 国税庁の法人番号公表サイトで商号を検索する。法人番号・登記上の所在地が出る。変更履歴も見られるので、商号が何度も変わっている法人はここで分かる
- 特商法ページで古物商許可番号を確認する。「◯◯公安委員会 第○○○○○○○○○○○○号」の形式で、12桁の番号があるか
- 特商法ページの事業者名と、法人番号公表サイトの商号が一致しているかを見る。ここがズレている場合は理由を確認したい
- クレジットカードの決済手段を見る。主要ブランドが並んでいれば、加盟店審査を通過している
- 発送日数と当選権利の期限を読む。24時間以内の業者と15営業日の業者が同じ市場にいる
1と2で引っかからない事業者なら、少なくとも「反社が正面からやっている」心配はほぼしなくていい。そのぶんのエネルギーを、規約の読み込みに回したほうが実益がある。
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ソース
- 古物営業法(e-Gov法令検索) ― 3条(許可)/4条(許可の基準)/24条(営業の停止等)/31条(罰則)
- 割賦販売法(e-Gov法令検索) ― 35条の17の8(クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の調査等)
- 国税庁 法人番号公表サイト
- 消費者庁「景品規制の概要」
- 各社の特定商取引法に基づく表記、および当編集部の既報
※本記事は2026年8月27日時点で編集部が確認した法令および公開情報にもとづく検証です。特定の事業者について、反社会的勢力との関係の有無を認定・断定するものではありません。摘発事例の有無についても、編集部の調査範囲で確認できなかったという事実を記載するにとどめています。法令の解釈については、個別の判断が必要な場合は専門家にご確認ください。